OISTサマースクール体験記

OISTのサマースクールに参加してきた。自戒の念を込めて日記に残す。他人のために書いてはいないが、万が一将来のOISTサマースクール参加者がこの日記を見つけたのなら、以下の文を英訳してみると多少意味があるのかもしれない。

 

 

 

7/28(日) 20時頃ホテルに到着する。部屋のキー解除に戸惑ってガンガンやってたらこの合宿中の同居人(A君)が中から開けてくれた。どうやら彼は寝ていたらしく、寝ぼけながら英語で話しかけられたものの何も分からなかった。簡単な自己紹介だけして荷物を置き、飯を食いに3階へ逃げ込む。同じタクシーに乗ってホテルに来た参加者がいたので隣で飯を食おうとしたら「こんばんは」と話しかけられて驚いた。何と彼(J君)は日本語が話せるのだ!嬉しかったがサマースクール中で彼といるとき、なるべく私は日本語を使わずに英語を使おうと決めた。そうでないとこのサマースクールに参加するメリットの半分は消えてしまう。明日から頑張るぞと気を引き締め部屋に帰るものの、やはり部屋のキー解除に苦戦してA君を怒らせてしまった。幸先が悪い。

 

7/29(月) 7時40分に起床。同居人は既に出発している。7時50分に迎えのバスが来るので急いで支度を済ます。こんな時間に起きたのはいつぶりだろうか。バスに乗ってキャンパスへと移動する。迷宮のように細長い構造で道が覚えられない。J君を発見して一緒に朝飯のパンをもそもそ食す。周りの参加者はほとんど海外から来ているので英語が飛び交う飛び交う。こんな中でやっていけるのかと不安になったが私の後輩も参加しているので先輩として情けない姿を見せるわけにはいかない。頑張ろうと決意し出発する。結論から述べるがサマースクール中、何度もみっともない姿を晒すことになる。

 朝食後は早速授業を受ける。午前中は75分の講義、15分休憩、そして2回目の75分の講義の後に昼食、というスケジュールである。初日午前の講義は調和解析についての講義だったがGilbarg-Trudingerの2章の内容であったため何も問題なかった。とはいえ講師の英語はあまり聞き取れず、黒板に書かずに口頭で済ましたことはノートに記せていないので勿体ないなと思った。同時に勿体ないって英語で何て言うんだ?と思いDeepLで調べる。私の英語力はこんなものである。

 ひどい昼食の後のスケジュールは(60分の全体講演)、75分の授業、30分休憩、75分の授業、という流れである。午後もやはり同じような内容で何も問題なかった。75分の授業時間は割と最適で、自分の通う大学の100分授業は長すぎるなあ、と講義中に考える余裕さえあった。

 問題はこの後で、講義後はキャンパスからホテルへと歩いて帰る必要があることに気が付く。強烈な日光を浴びながら激しい坂道を20分ほど歩くのは苦痛だった。普段全く運動をしないのでこれには堪えた。英会話よりもずっとしんどかった。汗だくでホテルに到着し、A君がまだいなかったので先にシャワーをいただく。シャンプーが2種類あったので良さげな方を使い、ベットでまったりした後夕食に向かう。夕食はビュッフェ形式でとても良かった。J君と後輩と共に食す。帰宅後A君に「君からいい匂いがするね」と言われ飯の話かと思ったがシャンプーの話だった。どうやら私が使ったのは彼の私物だったらしい。謝ったら「OK. No problem」と返してくれたので助かった。明日も使ったら許してくれるかなと思ったが、彼は私より縦も横もでかい。敵わぬ相手に歯向かうのは愚か者のすることである。

 まったり課題をやっていたら9時頃突然部屋の電気を消される。何事かと問うと彼は10時前には寝る、さらに暗いところでないと寝れないらしい。昨日は時差ボケで寝ていたと思っていたが勘違いだった。デカイ赤ちゃんがいたものだ。せめて机のライトはつけさせてくれと言ったら快諾してくれた。英語が通じて喜んでいたが、本来これは彼が私に頼むことだよな、と思い複雑な気分のまま課題をこなし、いつもならフィーバータイムであるはずの25時頃、大人しくベッドに潜る。

 

7/30(火) A君のシャワーの音で6時前に一度目を覚ます。二度寝して7時40分に起床し1階のロビーへ。7時50分のバスが既に出発してしまっていたので、取り残された数人で歩いてキャンパスへと向かった(待っていれば何度かお迎えが来ると後で分かった)。足が筋肉痛になっていることに気が付き日頃の運動不足を嘆く。

 今日は測度論の講義だった。専攻分野のハズだが何も知らない内容についてのレクチャーだったので興味深かった。しかし専門が狭すぎて一歩外れるとたちまち何も分からなくなるのは恥ずべきことなのかしらん?

 晩飯の後20時頃、班のメンバーで食堂に集まって前日に出された課題の相談を行った。私たちの班は5人のハズだが初日から私含めて3人しか集まっていなかった。英語で説明なんて出来るのかね?と不安だったがその必要はあまりなく、同じ班のKさんがほとんど課題をこなしていたのでそれのチェックのみだった。一問は私の解答が採用されたものの、英語で数学の解答をしっかり書いたのは初めてだった。数学の内容よりも体裁に不安を感じたのはB1の時を思い出して新鮮な感じが悪くないと思った。

 

7/31(水) 今日の講義は調和解析の続きと測度論(別の講師)で内容自体はほとんど既習済みだった。講義の途中に問題を解くよう指示があったが私は数分で出来てしまった。解けた人で発表する人を募っていたが挙手できなかったのは悔やまれる。英語で説明なんて準備なしではとても出来ない(準備すれば出来るとは一言も言っていない)。

 夕飯はいつもと異なり1階でBBQをやった。A君も誘って一緒に肉を食らう。彼は野菜もしっかり食べていて偉い。幸せタイムは束の間、すぐに課題の相談タイムがやってくる。A君を誘うが彼は胃が痛いらしく不参加。BBQのときはあんなに快く付いてきたのに!やはり3人しか集まらなかったがKさんが問1と問4をやってきてくれていたので、私が解いた問3と問5を合わせてすぐに提出できた。彼女の専門は流体に関する方程式で測度論は若干苦手らしいが、そこは私の出番だ。

 

8/1(木) 今日の講義もまだ問題ない。PDEの方はPerron's methodを勉強したが、super harmonic functionの定義が[G-T]とは少し異なることに注意を要する。[G-T]では連続性は仮定していたが講義では半連続までしか仮定しない。連続であるならばmean value propertyを同様に満たすことが確認できるが半連続までだとそれは無理なので余分な仮定を要していた。とはいえ(mvp)さえあれば最大値原理が導出できるのでそこまで問題にはならないのである。

 昼にケニアからの留学生に出会った。自己紹介の際「My name is Satoshi Takahashi」と言われ度肝を抜かれる。彼はジョークが好きらしく、それは私とて同様だが、彼の方が一枚上手だった。日本では私のジョークは大爆笑ものなので(?)日本語同様にジョークが言えるほどの英語力が欲しい!

 夕食はシチューもどきと魚の南蛮漬けが美味かった。ピラフも良かった。昼食と異なり夕飯は本当に美味しい。何より好きなものを選んで取れるのが良い。課題も3問しか出題されておらず、Kさん、J君、そして私が1問づつ解いていたので快適な夜を過ごす。今日追加の課題が8問出されていたのでそのうちいくつか解いて日記を記し、さっさと寝ることにした。

 

8/2(金) 前半戦最終日。測度論は良いがPDEの方が若干ついていけなくなる。ニュートンポテンシャルやらcapacityやら計算すれば分かるのだろうが講義を聞くだけでは分からない(英語はほとんど聞き取れていないので聞けてもいない!)。午後には全体講演としてハイゼンベルグ群上のPDEについての話を聞いたがこれは何一つ分からなかった。ハイゼンベルグ群上でPDEをやる動機やメリットが知りたかったが、どうやら量子力学への応用があるらしい?という情報のみしか得られず敗北。実は測度論もハイゼンベルグ群上でやる研究があるらしいことは知っているが、そちらを勉強することはおそらくないだろう。

 昨日の課題は提出締め切りが月曜ということで、今日は少しの相談のうちすぐにお開きとなった。明日は那覇を旅行することになっていてワクワクしていたので寝る気分ではなかった。いくつか課題を解き、少し講義の復習をし、気がつけばam2時に。急いでベッドに潜る。

 

8/3(土) 朝7時に起床。7時に朝食、8時に出発の予定である。休みの日なのでもっとゆっくり出発すれば良いのに!まずは首里城に向かった。火事の修理が済んでおらず、内部を見ることが出来なかったのは残念だ。全焼前の首里城は行ったことがあるがかなり立派だったので、J君には改めてまた来てほしいと伝えた。昼は国際通りに出向き昼食を食す。せっかくなので沖縄料理にしようということでタコライスの店をチョイス。沖縄そばもセットでとても美味しかった。ワークショップ初の美味い昼食である。Jくん曰く、メキシコのタコスとは全くの別物だったらしい。メキシコでは肉以外に玉ねぎやハーブなどもトルティーヤに包んで食べるという。いつかメキシコに行ったとき、本場のタコスを食してみたい。そのためにはまず英語を...

 午後は洞窟探検に行った。本ワークショップで最も楽しみにしていたイベントである。運動神経が壊滅的なので何度も転び、前の北大の先輩と後ろの留学生に何度も助けられた。疲れたがとても楽しかった。

 夜は軽食だった。カップラーメンが多く用意されていて留学生たちは興味津々であった。しかしポッドが用意されていなく、皆ぬるいお湯を入れレンジであっためていたため、皆容器が変形していた。爆発しないで良かった。さらに9時頃にはホテル内のバーにも行った。OISTはどこからこの金を得ている?久しぶりのアルコールが美味いこと美味いこと。カクテルを5杯ほど飲み気持ちが良い酔いがくる。大抵飲みに行くときは一人が多いので大人数でワイワイ飲むのは久しぶりで楽しかった。留学生のH君とも仲良くなり、一緒にゲームもした。UNO言ってない!は世界共通らしい。H君が満面の笑みで私に指摘したのはしばらく忘れないだろう。

 

8/4(日) 今日は予定がないので研究でもするかと思っていたら、朝後輩から何時に行くのか尋ねられる。どこに?と思ったらどうやら昨日バーでH君とJ君に国際通りを再び案内する約束をしていたらしい。後輩曰くH君と私は約束後ガッチリ握手までしたらしいがそんな話をしていたのか。会話をノリでしていることがバレかけたので全部お酒のせいにして切り抜ける。

 しかしH君は気分が良くないらしく、結局後輩とJ君の3人で国際通りに再び出向く。土産屋にいくつか寄ったのち、昼は沖縄そばの店に出向いた。こじんまりとした店だったが頼んだソーキそばはとても美味しく大満足だった。夜はムーンビーチに夕飯を食べに行った。しかしどの店も人が一杯で予約していないと入れなかった。OIST側で予約を取っておいて欲しかった。少し外れたところで空いている店を発見し、5人で食す。オススメ定食を頼んだが当たりだった。

 明日から後半戦がスタートするがもう少し他の参加者と会話することを目標にして頑張ろう。

 

8/5(月) (日記の書き忘れ。Evans先生の全体講演があった。測度論の本を持っているので、サインを貰いにOISTに持ってくれば良かったと悔やんだ)

 

8/6(火) PDEの講義にはそろそろ付いていけなくなった。1日復習する日が欲しい。

 月曜までの課題の締め切りが1日伸びて今日までだった。しかし私の班は夜になっても誰も集まらない。A君に来るよう言うも9時には寝たいらしく不参加。slackで呼びかけKさんとJ君を召喚することに何とか成功する。Kさんは2問しか解いておらず、諦めかけていたという。しかし宿題とは講師と我々との約束に他ならず、提出しないという選択肢はハナからない。私が4問解いていたのでJ君の解いた1問を合わせて提出。J君も諦めていたと聞くが信じられない。さらに今日までの別の課題(3問)も合わせて提出した。これでやっと気持ち良く寝れる。

 

8/7(水) 今日は午前中の講義の後、美ら海水族館に行った。何度か来たことがあったがやはりジンベイザメのいる大水槽は迫力があった。本当はもう少しゆっくり周りたかったが大満足だった。夜は別の高級そうなホテルでバイキングを食す。ほとんど肉しか食べなかったがめちゃくちゃ美味かった。これでワークショップの楽しみを全て終えてしまったのでもう帰っても良いかなと思ったが残すはたったの2日である。最後までやり切ろう。

 

 

8/8(木) 残念なことにKさんが明日朝帰るということで戦線離脱。私とJ君で課題を解くしかない。とはいえJ君は今回の課題提出を早々に諦めており、結局私が日付が回るまで解けるだけ解いて提出することになった。6問中3問しか解けなかったので残りを自室に戻って解くことに。A君のいびきをバックグラウンドにしばらく粘っていたが難しい。いつベッドに潜ったか分からないが全部解き切ることは叶わず。

 

8/9(金) 目を覚ますとえらい気分が良く、最終日だから体が軽いのかしらん?と思いきや時間を見ると9時であることに気が付く。一瞬焦るものの、100パーセント遅刻が確定している状況なのですぐに落ち着き、1階でコーヒーを買いつつ講義室へ歩いて向かう。

 最終日の講義ということで集中力があったがPDEの方の講義はもう良く分からなかった。ある論文を基に講義していることが分かったので帰宅後時間があるときにゆっくり復習したい。ただそれよりも早く研究がしたい!

 講義終了後、複数人でビーチに向かう。浅かったが少し泳げて良かった。BBQにも参加し、21時からは再びバーにも出向いた。カラオケを聴きながら飲むアルコールは素晴らしかった。24時過ぎ頃、私もちょっと歌ってみた。せっかくカラオケに来ているのに歌わないのはもったいない!後輩や知り合った先輩、留学生も参加して結構盛り上がった。ありがとう!エヴァンゲリオン

 参加時、2週間は長すぎるだろうと思っていたが、やはり講義が終わるとあっという間だったなあと思えた。別にこの2週間で数学力も英語力も大して向上したわけではないけれど、それでも、もっと勉強する強い動機を得たのでワークショップに参加して良かったと思う。特にJ君をはじめとしてたくさんの留学生と話したかったので英語力の向上は第一の目標である。参加した日本人学生のうち1人(結局誰か良く分からず)を除いて皆英語力が皆無だったのは情けない。来年参加するのであれば、しっかり英語で数学の議論ができるレベルにまで英語力を身につけたい。